好事例紹介

好事例紹介・ミニコラム

放射線MSに取り組んでいただいている医療機関の事例

本事業に参加いただいた医療機関の取組事例をご紹介します。

上尾中央総合病院

  • 労働安全衛生法の「危険性または有害性を調査し」は、「リスクアセスメント」の実施と捉えており、これを各分野、法令ごとに実施し、専門委員会・部会にて議論を行っている。それをもとに衛生委員会に諮り必要な措置を取っている。
    衛生委員会に付議する放射線管理の事項は、以下のとおり。

    1. リスクアセスメントの結果の確認
    2. リスクアセスメントにもとづく処置の計画の作成、実施、評価及び改善(PDCA)の状況確認
    3. 電離則健診や被ばく線量の状況確認 等
  • PDCAサイクルを機能させるため、文書管理規程を定めて、文書管理に特化した部署を設けている。また、ガバナンスの基本として文書が存在するので、文書をもとに安全衛生委員会が活動をしている。
  • 文書管理課に専従2名を置いている。文書には期限を設け、5年間改訂しない場合は、強制的に、委員会に対して規程、マニュアル等を改訂させる。膨大な量の文書なので、専従の職員を配置することが必要である。
  • MS導入により、医師、診療放射線技師、看護師、事務職などが、業務を行う理由や考え方を再確認した。また、職員と経営層との意思の疎通が図れている。このため、MS導入の3年間で、徐々に離職率も減っている。

中東遠総合医療センター

  • 院長のトップマネジメントにより、医師や看護師に放射防護の指示が出され、装置の更新にもつながった。院長のマネジメントのもとにMSが動いている。
  • 教育訓練は、医療安全とのコラボ開催等、まとめて重点的に開催している。講師の教育も行い、学会発表などをしている。
  • 撮影室の近くにラックを設置してバッジを装着する流れを作った。医師の装着率を上げるために線量計を着けたプロテクタを配布した。なお、研修医は、着任時のオリエンテーションにてバッジの装着を説明した所、きちんと装着してくれた。

東京臨海病院

  • トップマネジメントにより、放射線安全委員会、衛生委員会、医療放射線安全委員会により放射線管理を行っており、トップもこれに関与している。また、監査や細かい所のリスクマネジメントなどがMSにより改善された。
  • 衛生委員会にて放射線技師より被ばく線量の報告を行うようにした。この他、縦割りを廃し、放射線安全委員会、衛生委員会及び医療放射線安全委員会にて連携するようにした。
  • MS導入前からしっかりとした教育・訓練を行っており、導入後は、衛生委員会(委員長:副院長)の後押もあり、100%の回答率を頂いている。
  • 被ばく線量の異常値は、衛生委員会に報告し、リスクアセスメントは半年ごとの医療放射線安全委員会で確認している。
  • 透明なポケットに、バッジ、ルミネスバッジを入れて、検査の時に取り出し使用している医師のバッジの装着率は、100%である。

埼玉県済生会川口総合病院

  • 放射線防護検討委員会と安全衛生委員会の委員の兼務により、被ばく低減管理の情報が病院長へ上申しやすい仕組みが構築されている。これにより、防護機材の調達、文書の作成が進み、また、被ばく管理PDCAの各要素が決定・運用されている。
  • 安全管理者が医療放射線安全管理責任者を兼務し、また、放射線防護検討委員会と安全衛生委員会を兼務する委員がおり、連携と情報共有が図られている。
  • 個人線量計の装着状況の確認は、技師、看護師により行われ、線量評価は電子システムで一元管理している。また、その結果は、年2回の放射線防護検討委員会で報告している。
  • リスクアセスメントによる個人被ばく線量の評価データを活用し、効率的に、リスクの高いスタッフを把握している。今後は、リスクアセスメントを、施設の実態に合わせてカスタマイズして運用する。
  • リスクアセスメントによるリスクの見える化の結果、適切な介入判断や予測等がしやすくなり、計画的な被ばく管理が行われている。

川崎医科大学附属病院

  • 院内安全衛生委員会において、放射線管理情報が共有できる環境となっており、トップマネジメントがしっかりと組織上運用されている。
  • 個人線量計の管理については、電子管理により効率よく運用されている。個人への被ばく線量警告も2段階で行っており、早めの対応が心がけられている。
  • 独自のリスクアセスメントについては、前年度の被ばく状況から算定し、運用されている。
  • ERCP検査においての装置の使い分け(アンダーチューブ型へ誘導)をするなど、前年の被ばく状況を鑑みた、リスク低減対策に対するPDCAが活かされている。
  • 線量計の装着率に対するモニタリングは、半年に1回、1週間かけて行い、院内文書で報告している。

聖隷三方原病院

  • 安全衛生委員会と医療放射線委員会にあたる画像診断運営会議に兼務の委員が存在しており、連携が取れている。
  • 医師の働き方改革、労働安全衛生と関連づけて、水晶体、実効線量等を可視化し、オーバーする者のバッチ装着状況を確認している。装着方法については、放射線担当者が現場に入り指導をしている。
  • バッジを配るのみではなく、各診療科カンファレンスにて、水晶体や線量限度引き下げに関するアナウンスを行うとともに、白内障のリスクなどを説明することで、医師の意識改革を図っている。
  • 被ばく低減管理の手法として、1年に1回でも1.6mSv/月(100mSv/5年)を超える者が生じた場合、要注意リストに記録することとした。このリストを基に、再度超過した際に現場で注意するサイクルを安全衛生の中で実施している。

飯塚病院

  • MS導入の際に、放射線業務従事者の適正な被ばく管理をする上で、バッジの装着率を高める事を目標とした。このため、装着のチェックを開始し、セクション毎の装着の実態が見える様になった。なお、装着のチェックは、業務に支障が無い程度で各現場に配属されている放射線部のスタッフ(放射線技師)に協力を仰いだ。
  • 個人線量計配布の対象者を規定したチェックリストあり、月あたり0.8mSv(実効線量もしくは水晶体等価線量)を超えた従事者に関しては、年度積算値のリストを作成しモニタリングしており、必要十分な取り組みがされている。
  • 線量の大きい医師に対し、防護メガネ、DOSIRISの装着、防護板の新設等、できる範囲での対策を行った。防護メガネの装着だけで大きく線量が下がった。
  • バッジ未装着の情報伝達は、診療科、検査室、職種等ごとに、装着の状況をまとめて上にあげた。また、掲示、メール等で適切な装着方法の連絡をし、初年度は装着率が向上した。

四万十町国保大正診療所

  • 病院長自らトップマネジメントに取り組み、担当者と連携して放射線防護に対する意識を高めている。バッジ、防護プロテクタの装着率の向上、放射線業務従事者の適切な見直し、既存の文書を活用した文書体系の構築を図っている。また、継続的改善のため、内部監査には事務部、看護部の人員を用いている。
  • MS導入により文書体系が構築され、教育訓練の参加率も80%未満から90%以上に改善された。教育訓練には、医師、看護師、病棟の補助看、管理栄養士などが参加しており、放射線に従事する職員の教育訓練として、十分なものとなっている。
  • MS導入により、放射線被ばくの意識が変わり、バッジ装着率が上がっている。また、検出限界値を超える被ばくがあった時は、翌月の医療放射線安全委員会に数値等を報告し、該当者に連絡して意識を変える取組みができている。
  • MS導入のきっかけとなった、一般撮影が難しく介護が必要な患者(マンモグラフィなど)を対象に、介護の不要な機械(トモシンセス)を導入した。これにより従事者の被ばく線量を下げたことで、リスクの低減に寄与できた。

彩の国東大宮メディカルセンター

  • 病院長の理解があり、しっかりとした仕組みが構築されている。既存の委員会の整理から改善を着手し、合理的な組織づくりを行っている。
  • 委員会では目標管理シートに基づいたPDCAサイクルを回している。目標管理シートには、文書作成などの目標を定めて必要な実施内容を記載し、委員長、病院長、事務長、看護部長らが、目標管理及びそのシートを確認する形で組織変更などの目標管理を実施している。
  • 放射線安全委員会にて、水晶体被ばく線量を毎月モニタリングしている。水晶体の等価線量が1.6mSv/月を超える場合、委員会から院長に報告されている。また、事実確認をして状況調査をし、所属長とともに原因を調査して改善を図る取り組みを行っている。
  • リスクアセスメントは、高リスク群についても、被ばく状況から判断して適宜グループ変更を独自の施設で行っており、PDCAに準拠している。導入当初は透視件数、時間を収集していたが、傾向が分かるようになり、現在は個人ごとではなく、職種ごとに点数付けしているため、合理的にできるよう改善している。

東京都済生会中央病院

  • MS導入後、医療放射線量管理小委員会が設置され、放射線モニタリングの管理がより適切に行われるようになった。
  • 被ばく線量モニタリングに電子管理システムを用いており、合理的な管理がされている。
  • 被ばく線量を下げるため、防護板を使用した。この他、X線テレビでのオーバーチューブについては、鉛のカーテンを使用した。

八戸市立市民病院

  • MS導入の基盤となる委員会は安全衛生委員会と規定し、その責任者は安全衛生委員長としており、放射線被ばく管理を委員会の事案として取り扱ってもらえるようになっている。
  • 放射線安全管理チームを起点として、医療法関連では医療放射線管理委員会と医療安全管理委員会、電離則関連では安全衛生委員会を通じて、事業管理者(病院の経営グループ)へ、所定の案件等が上がる仕組みになっている。
  • 毎月、被ばく線量のチェックを行い、過去の被ばく線量との比較検討を行っている。
  • 人事異動のデータを事務方と共有して、定期健診などの受診管理を行っている。